【♂1 ♀1】先輩と後輩

   

1 後輩「先輩」

2 先輩「……」

3 後輩「せんぱーい! 本の世界から帰ってきてくださいよ! かわいい後輩ちゃんが呼んでますよ」

4 先輩「んー? ……なに?」

5 後輩「あの…… 私たちってわりといつも一緒にいるじゃないですか」

6 先輩「んー。……まぁ、そうね」

7 後輩「ですよね! もう二年ぐらいですよね! こうして一緒にいるようになって!」

8 先輩「そーだね」

9 後輩「で、私ってわりと可愛い方じゃないですか」

10 先輩「……」

11 後輩「せんぱい! おーい! 本の世界から帰ってコーイ。おーい!」

12 先輩「……はぁ。……で?」

13 後輩「私ってほら! わりと可愛い方じゃないですか!」

14 先輩「いや、そこはいい。聞こえてた」

15 後輩「うぅ…… 聞こえてて無視してたんですね…… それで、その…… あの…… 先輩って、彼女とかいます?」

16 先輩「……はぁ。どうでもいいだろ」

17 後輩「えっ?」

18 先輩「えっ?」

19 後輩「いやいや、どうでもよくないですよ。ちゃんと答えてくださいよ」

20 先輩「お前……」

21 後輩「はい!」

22 先輩「……なんか今日、ウザい」

23 後輩「ガーン!」

24 先輩「擬音もウザい…… ッチ」

25 後輩「舌打ちまで!?」

26 先輩「……なに、漫才やりたいの? なら、本読む邪魔すんなよ。今いいところだから。とりあえず、
おとなしく漫画でも読んでろよ」

27 後輩「そんなこと言わんとー。教えてくださいよ~。一生のお願いですからぁ〜!」

28 先輩「18回目」

29 後輩「えっ」

30 先輩「18回目だ。お前の新しい一生が始まったの」

31 後輩「えへん! 不死鳥と呼んでください!」

32 先輩「ふぅ~ん」

33 後輩「なんかのリアクションくださいよ〜。放置はひどいですよ~」

34 先輩「……はぁ。で、18回目の人生が始まった不死鳥さん。なんでそんな知りたいわけ? どうでもいいじゃん。そんなこと」

35 後輩「どうでも良くないです! 死活問題ですよ!」

36 先輩「ふぅ~ん。っていうかわかるじゃん。いつも一緒にいるんだから」

37 後輩「いや、わかりませんよー! さすがの私も夜までは一緒じゃ無いですから! もしかしたら、夜中にこっそり…… キャー!」

38 先輩「……はぁ」

39 後輩「うぅ…… そんな目で見ないでくださいよぅ。あ、そうだ。じゃあ、質問を変えます! 好きな人っているんですか!?」

40 先輩「19回目…… まぁいいや。いるよ」

41 後輩「そっかいるんだぁー。って、えぇ!? どどど、だ、誰ですか!? こんな世界との関わりを完全に絶った仙人みたいな。
あまりの女っ気の無さに「もしかしてこの人そっち系なんじゃ…?」なんて何度も思わされた先輩を籠絡した人は!
い…一体どんな女神様なんですか!?」

42 先輩「お前なぁ…… はぁ……おまえ」

43 後輩「えっ?」

44 先輩「えっ?」

45 後輩「?」

46 先輩「いや、お前の後ろには誰もいないから」

47 後輩「えっ?」

48 先輩「……」

49 後輩「私…… ですか!?」

50 先輩「そーだよ。普段からそれとなく伝えてんだから分かれよ」

51 後輩「えっ? いつ、いつ…… ですか?」

52 先輩「昼休みは毎回一緒に飯を食べて、クリスマスは一緒に街に出て、休日のたびに一緒に遊んで、ついこの間の誕生日なんか…… 渡しただろ?」

53 後輩「えっ?」

54 先輩「指輪…… 一緒に街歩いてるとき買ってやっただろうが。お前が欲しそうにしてたから……」

55 後輩「えっ、でも先輩、すっごい嫌そうだったじゃないですか。たかられた~って」

56 先輩「……はぁ~。照れ隠しに決まってんだろ。大体、特別に思ってなかったらそんなもん買わないって」

57 後輩「えっ…… ちょ…… え? あれぇ? ちょ、ちょっと待ってください。タンマです。タイムです。……あの、やり直していいですか?」

58 先輩「えっ?」

59 後輩「えっ?」

60 先輩「やり直すって何を?」

61 後輩「その…… せっかくだから、ちゃんと言葉にして聞きたいって言うか…… こんななぁなぁなんじゃなく……
せっかくですし。一生に一度ですしあの……」

62 先輩「好きだ」

63 後輩「えっ?」

64 先輩「この二年間、ずっと一緒にいて、俺にとってお前はもういなくちゃいけない存在になってる。
だから、この先、卒業してもずっと、死ぬまで俺と一緒にいてほしい。……これでいいか?」

65 後輩「えっ、ちょ、だからタンマですって。あ、あの、録音しますので、すいませんけどもう一回。もう一回お願いします」

66 先輩「もう言わねぇよ、馬鹿」

67 後輩「え? え~? あの、一生のおねg」

68 先輩「お前の一生のお願いはもうおしまいだ。……お前の19回目の一生は、俺とずっと過ごしてもらうんだからな」

69 後輩「……はい!」

 © 2016 堂家 紳士

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