[♂1 ♀2】雨宿り
登場人物
サラリーマン 新人サラリーマン
女子高校生 毎日に退屈している高校生
SE:水滴の音
1 サラリーマン「ん? 雨粒? ……おいおいおい。マジかよこんなに晴れてるのに」
SE:雨粒の音
2 女子高校生「え……雨? 困ったな……傘なんて持ってきてないよ……」
SE:雨音強く
3 サラリーマン「仕方ない……」
4 女子高校生「あ、そうだ……あそこで」
5 サ&女「雨宿りをしよう」
SE:雨の音
SE:雨の中を走る音
6 サラリーマン「はぁ……はぁ…… うへー。いきなり降ってくるんだもんなぁ……あー。スーツが濡れちゃったよ……結構高かったのに……」
SE:雨の中を走る音+雨の音
7 女子高校生「はぁ……はぁ……。もー最悪っ! 雨降るなんて言ってかったのに……。あ……こんにちわ」
8 サラリーマン「こ、こんにちわ……」
SE:雨の音
9 女子高生「もー。下着までびしょびしょだよ……最悪……」
10 サラリーマン「ははは……僕も買いたてのスーツがびしょびしょになっちゃったよ……あ!」
11 サラリーマン「(どうしよう……あの子の服……透けちゃってる……言ってあげたほうがいいかな……でも、ずっと見てたと思われたらどうしよう……)」
12 女子高生「……? 急に声をあげてどうしたんですか? ……! キャッ!」
13 サラリーマン「ご、ごめん……教えてあげようと思ったんだけど……」
14 女子高生「教えようと思ったけど、勿体無いから黙ってじーっと見てたんですか? 変態!」
15 サラリーマン「……ム! 失礼な子だな。言い出しにくかっただけだよ! 気付いたのだって今さっきだし、っは! それに、そんなまっ平らな体見てもうれしくないよ。ほらっ、僕の上着を貸すからそれでも着ておきなよ」
16 女子高生「言うにことかいてまっ平ら……そっちこそ! そんな安いスーツを大事そうにしてる貧乏サラリーマンのくせに! それに……その上着びしょびしょじゃないですか! 私に風邪をひけって言うんですか!?」
17 サラリーマン「安いスーツって……! 暇な学生には分からないだろうけど、汗水たらしてお金を稼いで自分で買うのって大変なんだぞ……! まったく……学生は気楽でいいなぁ!」
18 女子高生「貴方みたいな人ですら出来るんなら、簡単なんじゃないですかぁ? 自分より一回り近く下の女の子の透けた体見て喜んでる変体のくせに! それに、学生にだって大変なことはいっぱいあります! 自分達ばっかり苦労してるみたいなこと言わないでください!」
19 サラリーマン「一回りって……僕はまだ23だ! そこまで歳じゃない!」
20 女子高生「……えっ!?……」
21 サラリーマン「……え?」
22 女子高生「貴方ってまだ23だったんですか? ……あまりにくたびれた感じの顔をしてたからてっきり30近くかと……」
23 サラリーマン「ひ……ひどい。自分でもふけ顔だなとは思ってたけど……そこまでだなんて……いいさいいさ……どうせ僕はおっさん顔さ……だから大学生のとき好きなった子だって……「顔が好みじゃない」とか言われるのさ……ブツブツ……」
24 女子高生「あ、でも……よ、よく見たら若いかもしれないですね。あ、あはは」
25 サラリーマン「慰めてくれなくてもいいよ。分かってるんだ。見た目が老けている事も、そのわりに要領が悪い事も……会社でも……『お前、そんなナリしてるわりにこんな事もできないのか』って。『他の同期たちはもうこれぐらい出来るようになってんだぞ』って。よく怒られたりね……」
26 女子高生「……」
27 サラリーマン「あー。学生時代は良かったなぁ……明日何しようとか、将来何になりたいとか、毎日が輝いてた……戻りたいよ……僕も君ぐらいの歳のころに……」
28 女子高生「学生も……」
29 サラリーマン「え?」
30 女子高生「学生だって……そんな楽しいことばかりじゃないですよ……私……いじめられてるんです」
31 サラリーマン「え……は、ははっ、また僕をからかって。君みたいに可愛い子じゃ……いじめられないだろう? むしろ男子とかにもモテて、友達に囲まれて……毎日が楽しいんじゃないのかい?」
32 女子高生「はは……私はそんなの望んでない。別に男子にモテたいなんて考えたこと無いですよ。あんな子供っぽい人たち……頭のなかじゃ、女の子とエッチな事することしか考えてないんですから……そういう対象には見れません。でも……知ってます? オンナノコって怖い生き物なんですよ」
33 サラリーマン「オンナノコねぇ……ははっ。僕には分からないや……生まれてから今まであまりオンナノコと関わってこなかったからね……」
34 女子高生「オンナノコって……横一列に整列するのが大好きなんです。皆同じスタートにいなきゃ駄目。列を乱すのは許さない。もし、列より前にいたら足をひっかけ……列より後ろにいたら砂をかけるんです。たとえ、それが今の今まで仲良くしていた相手でも……」
35 サラリーマン「……」
36 女子高生「ね? オンナノコって貴方が考えてるより怖いでしょ? だから、軽々しく学生は楽で楽しいなんて言わないでください。そうじゃない子もいるんです……」
37 サラリーマン「君も……」
38 女子高生「え?」
39 サラリーマン「君も、そのたとえ話のように友達に裏切られたの?」
40 女子高生「ふふっ。どうでしょうね。友達だったんでしょうか。もしかしたら最初からそう思っていなかったのかも。私もそう思っていたのかも……」
41 サラリーマン「……ごめん。会社に入ったばかりで何もかも上手くいかなくて……学生の君がうらやましくて……軽率なこと言った。ほんとうにごめん……」
42 女子高生「……な~んて。ねっ! 信じました? 冗談ですよ~。ねっ! 女の子って怖いでしょ? ふふっ。だから……そんなに悲しい顔をしないでください……ね」
43 サラリーマン「うん……ごめん……」
44 女子高生「もう謝らないでください。私もちょっとイライラしていて……その……変態とか……貧乏とか……貴方に酷い事を言いました。ごめんなさい」
45 サラリーマン「ううん。いいよ。僕の気がきかなかったのが悪かったんだ。今まで、あまり女の子と親しくしたことが無くて……その……下着が透けてるなんて言ったら変に思われるんじゃないかと思って」
46 女子高生「ふふ。大丈夫ですよ。まだ若いんですから! これからだっていっぱい良い出会いもありますよ!」
47 サラリーマン「はは。君みたいな若い子に、まだ若いって言われるのも複雑だけど……うん。頑張ってみるよ。仕事も……それ以外も。だから……君も頑張れ!」
48 女子高生「はい! そうですね……私も頑張らなきゃですね。まだ若いんだし。ふふっ」
SE:雨脚が弱くなっていく音
49 サラリーマン「あ、雨やんで来たかな」
50 女子高生「そう……みたいですね。学校は完全に遅刻ですけど」
51 サラリーマン「僕も。また上司に怒られちゃうな」
52 女子高生「それじゃぁ、お先に出ますね」
53 サラリーマン「……あのさ!」
54 女子高生「(振り返りながら)はい?」
55 サラリーマン「……その。……ま、また…………。なんでもない」
56 女子高生「そうですか……それじゃ」
57 サラリーマン「(小さく)……はぁ……ほんとだめだな……僕は……」
58 女子高生「あ、そうそう」
59 サラリーマン「……! 何?」
60 女子高生「ちょっと……透けちゃったまま出歩くのが恥ずかしいんで……やっぱり上着貸してもらえますか? ちゃんと返しますので――」