【♂1 ♀2】 こはかすがい
2016/07/30
出演者
タカシ=24歳、独身。ユカと付き合っているが、仕事に追われて余裕が無い。
ユカ=23歳、独身。タカシと付き合っている。お腹にタカシの子がいるが、打ち明けられていない。
ミカ=7歳。タカシとユカの前に突然現れる迷子の子。オチの部分ではあるが、タカシとユカの未来の子という設定。
(脇役)
父親
子供
ユカ「たかし…… たかし! ねぇってば! 聞いてる?」
タカシ「……ん? あぁ…… 聞いてるよ」
ユカ「ほんとに? 大事な事なんだよ? これは…… 二人のための……」
タカシ「だーかーらー! 分かってるっての! うるせーな…… だから、こうして休日にわざわざ時間を作ってんだろ?」
ユカ「……へぇ。……そういう事言うんだ…… わざわざ…… ね。はぁ…… なんか、納得しちゃったなぁ」
タカシ「は? 何がだよ」
ユカ「タカシは、本当は結婚とかしたくないんだよ。自分が良い歳になって、たまたま付き合ってたのが私だっただけ」
タカシ「……んなことねーよ」
ユカ「あるよ!! そうじゃなきゃ、そんな事言わない! タカシはね、ずっと私の事見えてないのよ! 見ようとすらしてない!」
タカシ「っるっせーな! んなこと言ったら、おまえだって俺の事なんかぜんっぜん考えてないだろうが! 俺の仕事が、今大事な時期で、俺、全然休めてないのお前知ってるよね?」
ユカ「だけど! 私たちの結婚の話なんだよ!? 私だって色々あるけど、二人のためだからなんとかしようって…… そう…… 考えてるのに!」
タカシ「だーかーらー! こうして時間だって作ってるって言ってんじゃん! なんなんだよ今日は…… お前、おかしいぞ?」
ユカ「……いるの」
タカシ「は?」
ユカ「赤ちゃんがいるのよ! あなたの!」
タカシ「……なっ…… それ…… え……?」
ユカ「…………喜んで、くれないんだね。……かえる……」
タカシ「……はっ! お、おい! 待てよユカ!」
店員「お客様! ……申し訳ありませんが、お会計がまだです」
タカシ「ぁ…… はい。すいません」
*間
(以下リバーブを弱めて、外の感じを強く)
タカシ「……おい! 待てってユカ! 話を聞かせてくれって! どういうことなんだよ? 医者…… 医者は行ったのか!?」
ユカ「もういいって言ってるでしょ! いいよ! この子は私一人で育てる!」
タカシ「いや、待ってくれって! 俺も混乱してんだよ。だからとにかく…… ん? ……どうした?」
ユカ「あれ…… あの子……」
タカシ「ただの迷子だろ? 今はそれどころじゃ…… っておい! ユカ! おいユカ! ……くそっ!」
*間
女の子「ひくっ…… ひっくっ……」
ユカ「ねぇ、どうしたの? お母さんとはぐれちゃったの?」
女の子「……お父さんとお母さんが喧嘩して…… ひぐっ…… それで、嫌で…… うちを出たら…… どこかわからなくなっちゃったの……」
ユカ「そっか…… 不安だったね……」
タカシ「おいユカ! だから…… ん? そいつ…… どっかで見たことあるような……」
ユカ「ほんと!? タカシ!」
タカシ「うおっ…… お、おう……」
ユカ「どこで!? どこで見たの!?」
タカシ「ん~……」
ユカ「ちょっと! 早く思い出してよ! この子不安なんだよ!?」
タカシ「いや…… そうは言ってもだなぁ…… う~ん…… どこで見たんだっけなぁ……」
ユカ「もうっ! こういう時ほんと頼りにならないんだから! ……とにかく! タカシが見たことあるんだったら、きっとうちの近所でしょ? ……ねぇ、あなた、お名前は?」
女の子「ミカ」
ユカ「じゃあミカちゃん、お姉ちゃん達と一緒におうち探してみようか!」
タカシ「おいおいおいおい! マジかよ。警察につれてったほうがいいって」
ミカ「……! イヤ!」
ユカ「ちょっと! かわいそうじゃない! ほら、それにミカちゃん怖がってるでしょ!」
タカシ「いや…… 俺はだな…… そのほうが早く…… ごめん」
ユカ「……はぁ。もういいから。いくよ。ミカちゃんも、お姉ちゃんと一緒にいこ!」
ミカ「いくー!」
*間
ユカ「どう? ミカちゃん。ここらへん、見覚えある?」
ミカ「う~ん……? わかんない……」
ユカ「そっかぁ……」
ミカ「う~……」
ユカ「大丈夫。そんな心配そうな顔しないで。お姉ちゃんたちが絶対にミカちゃんをおうちに連れて行ってあげるからね。ね? タカシ」
タカシ「ん…… まぁ、乗りかかった船だからな」
ミカ「ほんと!? パパ、おうち連れてってくれるの?」
タカシ「パパぁ!? やめてくれ…… まだ、こんな大きな子供は持ちたくねぇよ……」
ミカ「…… ひっく…… ふぇぇ……」
タカシ「あっ…… やべっ」
ユカ「ちょっとタカシ! あんたほんっとデリカシー無いんだから! あ~よしよし、ほんっと馬鹿で、空気読めなくて、頼りにならないパパでごめんね~」
タカシ「悪かったって…… そのへんで勘弁してくれよ…… ああ…… おい…… その…… 悪かったな。許して…… くれるか?」
ミカ「……ひっく。じゃぁ…… パパって呼んでいい?」
タカシ「う……」
ユカ「ちょっとタカシ!?」
ミカ「ふえぇ……」
タカシ「あ~! もう分かったって! しょうがねぇなぁ…… もう、好きに呼んでくれ……」
ミカ「うん! 分かった! パパ! えへへ」
ユカ「かわいい……! ねぇ、おねえちゃんは? おねえちゃんは!?」
タカシ「がっつきすぎだろ…… その子、怖がってるじゃん……」
ユカ「タカシに言われたくありませんー!」
ミカ「パパ! ママ! けんかしちゃめー!」
ユカ・タカシ「はい、すいません………」
*間
タカシ「もう、だいぶうちに近くなってきたな」
ユカ「ね、ミカちゃん。このへんはどう? 見覚え無いかな?」
ミカ「わかんない……」
タカシ「ほんとか? あれとか、あれ、見覚え無いか? ミカのうちの近くに何があった? なんでもいい、覚えてること無いか?」
ミカ「パパ…… イタい……」
ユカ「ちょっと! やめなさいよ! ミカちゃん痛がってるじゃない!」
タカシ「あ…… ごめん……」
ユカ「それに、タカシが思い出せば解決するんだよ?」
タカシ「んな事言っても、思い出せない者は思い出せねーんだ。……ん? ミカ。どうした……? なっ!?」
ミカ「わんわん!」
SE:犬のうなり声
ユカ「うそ…… なんで……? 野良……なの……?」
タカシ「いや…… 首輪はつけてる…… どっかから逃げ出してきたんだろうな…… ユカ…… ミカちゃんを……」
ユカ「う、うん…… ミカちゃん…… ほら、おいで」
ミカ「だっこー?」
ユカ「うん…… だからほら。よいっしょっ!」
ミカ「キャッキャ……!」
タカシ「ユカ…… ちょっとこれはシャレにならない。先にミカちゃんを連れて逃げろ!」
ユカ「だけど…… それじゃタカシが!」
タカシ「俺は大丈夫だ。最悪木にでも登って逃げるさ…… それに、ほら…… こういう時ぐらいしか、男らしいことしてやれないだろ」
ユカ「タカシ!」
タカシ「あ、でも無事逃げ切れたら、人呼んできて。お願い…… 行け!」
ユカ「タカシありがとう……! 絶対に……! 人を連れて戻ってくるからね!」
子供「あ、ゴンいた! パパ-! ゴンいたよ!」
*間
父親「ほんと、すいません。うちの犬がご迷惑をおかけしたみたいで…… お怪我とかされてませんか?」
タカシ「いえ、全然大丈夫っす。な? お前たちも怪我してないよな?」
ユカ「え、えぇ」
ミカ「わんわーん!」
ユカ「ほら、わんちゃんにバイバイしようねー。バイバーイ」
ミカ「わんちゃ、ばいばーい!」
父親「では、私たちはこれで。本当にすいませんでした…… ほら、いくぞ」
タカシ「……ふぅ。びびったー」
ユカ「あはは。タカシ震えてたもんねー」
タカシ「そういうユカだって泣きそうな顔してたじゃねぇかよ……それにしても……」
ユカ「……?」
タカシ「いんや。なんでもねぇ。おしっ! ミカ。ほら行くぞ」
ミカ「うん!!」
ユカ「あれー? 急にやる気じゃーん」
タカシ「うるせぇよ…… ほら」
ミカ「ダメー! ママはこっちー!」
ユカ「ふふっ。はいはい。じゃあママとおててつなぎましょうねー」
ミカ「なかよし!」
ユカ「ん?」
ミカ「ミカとママはなかよし!」
ユカ「ねー。仲良し」
タカシ「おいおいパパは?」
ミカ「なかよし!」
タカシ「ははは。よしよし」
ユカ「えへへ~」
タカシ「ミカは良い子だな」
ミカ「……」
ユカ「……ミカ?」
ミカ「……パパとママは?」
タカシ「ん?」
ミカ「パパとママは仲良し?」
タカシ「……」
ミカ「……」
ユカ「パパ? ……ママ?」
タカシ「……! あぁ! 仲良しだ! な?」
ユカ「……うん」
ミカ「えへへ。良かった! パパ、ママ、また会おうね」
タカシ「え? あ、おい。ミカ! ミカ! ……あれ? っつかしいなー。たしかにここに入っていったのに」
ユカ「ミカー! ミカー!」
タカシ「家が近かったのかな?」
ユカ「分からない……けど。どうしてだろう。また、会えるような気がするんだ」
タカシ「あぁ……ミカ……」
ユカ「ん?」
タカシ「あのさ……」
ユカ「うん」
タカシ「俺、良い父親になるから……」
ユカ「……うん」
タカシ「その子の名前……、俺、考えついたんだけど」
ユカ「あたしも」
タカシ「もし、女の子だったら……」