【♂2 ♀1】捨て子のリクと、ライカン少女
タケル 32歳 書物を書くのが仕事で冷静沈着。25の時に捨てられていたリクを見つけ、以来親子のような関係。
リク 12歳 破天荒で自由奔放。5歳の時に両親に捨てられ、途方に暮れていたところをタケルに拾われた。
ミーシャ 13歳 言葉使いが悪いが、心優しい女の子。ライカンスロープで、人間の仕掛けた罠にかかってしまったため、両親に捨てられた。
■1話 タケルの書斎
リク「タケル。なぁ……なぁってば、なぁ! タケル~!」
タケル「……うるさいですよリク。それに私の事は父と呼びなさいとあれほど……」
リク「そんなことは良いからさ。遊びにいこうぜ。なぁ、な~ぁ~」
タケル「……はぁ。見てわからないですか? 私はこうして仕事をしているんです。あなたの遊びに付き合っている暇はありません。静かにしててください」
リク「いいじゃん! そんな本なんか読んでないでさ~。遊ぼうって、ねぇってばさ。タ~ケ~ル~!」
タケル「ですから、これは本を読んでいるのではなく魔導書の……って、……分かってない顔ですね」
リク「うん! 全然わかんね! なーなータケル~! 無視かよ~なぁ~。……ちぇー……ぶー。いいよもう。たけるのばーか!」
タケル「はぁ……。さて、続きですね……。魔晶石の輝きはその性質に……」
リク「……追ってこないの? なぁ、タケル~。……タケル?」
タケル「それぞれに対応する魔素により、それぞれ個別の反応を……」
リク「うぅ……タケルのばかああああああああああああ!」
タケル「……ん? リク? やれやれ……まったく……」
■2話 タケルの家から離れた山中_夕方
リク「やっぱり俺が本当の子供じゃないからかな…… だから……あんな……」
SE:草むらがガサガサ言う音
リク「だ、誰っ!? ……タケル?」
SE:ガサガサ音大きく
SE:魔獣(犬型)の咆吼
< 背景切り替え:林道 >
リク「!? うわあああああああああ!」
SE:草むらの中を走る音
リク「やだやだやだやだっ! 来るな! 来るなぁぁあぁぁぁ!」
SE:魔獣の咆吼
リク「はぁ……はぁ……来るなよぉ! うわっ!? うわあああああああ!」
SE:木をクッションにしながら落ちていく音
< 背景切り替え:崖下 >
リク「あいっ……ててて……たす……かっ……、っ……! ってー……! 足……捻った……」
リク「おーい。誰かー。ねえ、誰かいないのー? おーい! …………誰か-! タケル-! 助けてよー! ねえ……たけるー!」
リク「タケルー……ねぇ……だれか……だれかいないの-? ぐすっ……」
ミーシャ「あんた男なのに泣いてんのね! かっこわるーい!」
リク「……誰?」
ミーシャ「あたしはミーシャ! それよりあんた、なんでこんなところにいるの?」
リク「あそこから落ちちゃって……」
ミーシャ「はぁっ!? あそこからっ? ……よく無事だったわねぇ」
リク「無事じゃないよ! 足……痛い……」
ミーシャ「えっ? ちょっと! 青くなっちゃってるじゃない! あたしのうちすぐそこだから……! ついてきてっ!」
リク「……」
ミーシャ「ほらっ! 早く早く! なにしてるのよ!」
リク「……痛くて、歩けないよぉ……」
ミーシャ「もうっ! まったく世話がやけるんだからっ!」
■3話 ミーシャの家_夜
SE:火のたかれているパチパチという音と夜の虫の鳴き声
ミーシャ「良かった……骨は折れてないみたいね」
リク「ありがとう。ミーシャってすごいんだね」
ミーシャ「ふっふーん。まぁねー。怪我の治療ぐらい簡単よ!」
/ブラックアウト
/クリックで解除
リク「そういえば、ミーシャのお父さんとお母さんは?」
ミーシャ「……」
リク「ミーシャ?」
ミーシャ「……いないわ」
リク「えっ・・…」
ミーシャ「……」
リク「……ごめん」
ミーシャ「でも大丈夫よ! みんながいるもの!」
リク「みんな……?」
ミーシャ「そう。みんなよ! ほら!」
リク「……!? うわぁ! お前は……! さっきの……!」
■4話 ミーシャの家_夜
ミーシャ「あはははは。驚いてるー!」
リク「離れて! ミーシャ! そいつは危ない!」
ミーシャ「大丈夫……。おいで、リカル」
リク「えっ………襲って、来ない?」
ミーシャ「紹介するわ。ヘルハウンドのリカルよ。私の家族なの」
リク「え……? 家族……?」
ミーシャ「他にも……ほらっ」
リク「うわっ!? うわわわわ!」
ミーシャ「みーんな私の家族なの……驚いた?」
リク「うん……まさか魔獣が家族なんて……」
ミーシャ「みんな、みーんな優しくていい子たちだわ。きっとリクとも仲良くなれると思うのよ! ……どう、かな?」
リク「どうって?」
ミーシャ「私達とここで暮らさない? 食べ物はみんながとってきてくれるわ! それに、小さいけれど畑もあるのよ! だから……ね? リク。ここで一緒に暮らしましょう?」
リク「でも……タケルが……」
ミーシャ「タケルって……何?」
■5話 ミーシャの家_夜
リク「えっ……?」
ミーシャ「タケルって何? 家族? そんなわけないわよね! こんなに暗くなって、あなたが帰って来ないのに探しにも来ないんだもの! もし家族だとしても、そんなの家族とは言わないわ! ……だから、ね? リク。私達とここで幸せに暮らしましょう?」
リク「ミーシャ……? どうしたの……? 恐いよ……」
ミーシャ「リクが悪いのよっ! リクがっ……! 帰るなんて言うから……!!」
SE:魔獣のうなり声
リク「と、とにかくミーシャ。僕、帰るね……! また遊ぼう……」
ミーシャ「駄目っ!!」
リク「っ!?」
ミーシャ「駄目よリク……。そんなの許さないわ。帰るなんて……そんなの。あなたは私達とここでずーっと一緒に暮らすのよ……。あぁあぁぁぁああ! 痛い痛い痛いっ!! 違う! だから私は……あんたたちが私を捨てるからっ!!! だから……!」
リク「っ……!! うわあああああああああ!!」
ミーシャ「逃がさない!!」
リク「うわぁっ!?」
ミーシャ「逃がさないわ……リク。あなたは出ていっては駄目……」
リク「ミーシャ、また遊びに来るから。今日はもう帰して……ね?」
ミーシャ「そんな事いって、もう来ないんだわっ!!」
リク「そんな事ないよ! きっと来るから……そうだ、僕のうち!」
ミーシャ「え……?」
リク「僕のうちにおいでよ! みんなも一緒に! タケルなら、きっといいって言ってくれるから!」
ミーシャ「ほんとう……?」
リク「本当だよ! だから……」
タケル「申し訳ありませんが、それはできません」
■6話 ミーシャの家の外_夜
リク「タケル!?」
タケル「探しましたよ。リク。さぁ、戻りましょう」
リク「でも……! ミーシャが……!」
タケル「ミーシャ……? リク。あなたは誰の事を言っているのですか?」
リク「だから……あの子が……えっ!? うわああああああああ!! み……ミーシャ!? どうしたの、その姿……」
ミーシャ「ぐるるる……りイイイイクぅウぅうゥゥゥゥゥ!!!」
リク「ひっ! ばっ、化け物っ!!」
ミーシャ「……っ!!」
リク「あれ……襲って……来ない? ミーシャ……?」
ミーシャ「……ごめん。なさい」
タケル「……」
ミーシャ「ごめんなさい……もう、わがまま言わないから……一人にしないで……」
SE:魔獣(犬型)クーンという鳴き声
リク「ミーシャ……」
タケル「……はぁ」
リク「タケル?」
タケル「あなたは、人ではありませんね」
ミーシャ「……」
リク「人じゃない……って?」
タケル「ライカンスロープ。それが彼女達の種族の名前です」
■7話 ミーシャの家の外_夜
リク「ライカンスロープ……」
タケル「狼人間とも呼ばれる種族で、普段は人の姿をとりますが、感情が高ぶった時や月の光によって、狼の姿へと変身します。私も見るのは初めてですが……ライカンスロープは本来、群れで行動するはず。あなたの家族はどこです」
ミーシャ「……ここにいるわ。ここにいるみんなが私の家族よ」
タケル「……どう見ても彼らはただのヘルハウンドです。ライカンスロープなどではない……あなたの、ご両親はどこです」
ミーシャ「両親……ね、あんな奴ら、私にとっては家族でもなんでもない! あいつらは、罠にかかった私を捨てた! 見殺しにした!! あんな奴らが家族なんて、そんなはずない!!」
SE:魔獣(犬型)の甘えるような鳴き声
ミーシャ「……私の家族はこの子たちだけ……あの時、人間の仕掛けた罠にかかって抜け出せなかった私を助けてくれたのは……牙がかけてでも罠を壊してくれたのはこの子……だから、この子たちだけが私の家族なのよ……でも……」
リク「ミーシャ……」
ミーシャ「でも……嬉しかった。リクが、同世代の男の子と話すのなんて初めてだったから……この子たちは言葉を喋ってくれないし……」
タケル「だから……リクを捕まえようと?」
ミーシャ「だって……仕方ないじゃない! 私は捨てられたけど、リクは……リクには帰る家があるんだから!! 他にどうしろって言うのよ!! ………ふえーん」
リク「ミーシャ……、僕も嬉しかったよ! 僕も、捨てられたんだ……本当のパパとママに」
ミーシャ「えっ……」
リク「本当のパパとママがどんな人だったか、もうあんまり覚えてないけど……。ただ、ひたすら僕に。ごめん。ごめんね。幸せになってね。ごめんねって、謝っていた事だけは覚えてる……」
タケル「リク……」
リク「だけど、寂しくないよ! ミーシャに皆がいたように、僕にもタケルがいたから! タケルは捨てられていた僕を拾って、そのまま育ててくれた……だからね、本当のパパとママの事は知らないけど、ちっとも寂しくないんだ! ……けど」
ミーシャ「けど……?」
リク「僕には、友達がいない……。頭が良くないし、みんなみたいに出来ないから……いつも一緒に遊んでもらえないんだ…………だからね! 僕、嬉しかった! リカルに追いかけられたのは恐かったけど、ミーシャと出会えた! 友達ができて、僕嬉しかったんだ!!」
■8話 ミーシャの家の外_夜
ミーシャ「友達……?」
リク「そう、友達! ミーシャも、みんなも! もう僕たちは友達でしょ?」
ミーシャ「友達……! うん! 友達! そう、私達友達ね!」
SE:魔獣(犬型)の犬のような鳴き声
リク「うん!」
タケル「…………はぁ~」
リク「タケル?」
タケル「分かっていますか? ここを出て、あなたたちが人里で暮らすというのはそんなに簡単な事ではありません。彼女だけなら、なんとか隠しおおせるとしても、彼らは……ヘルハウンド達は魔獣そのものですから。きっと村の人達に歓迎はされません」
ミーシャ「リカル達と離れるなんて出来ないわ!!」
タケル「ですから! 私が言っているのは、簡単な事ではありませんし、きっとこれから沢山苦労すると思います。それでも、あなたたちは我慢できますか? もちろんリク。あなたもです。彼女達と暮らすという事は、村でさらに孤立するという事です。きっと嫌がらせなども今の比では無いでしょう……それでも、彼らと一緒に暮らしたいですか?」
リク「うん!」
タケル「ミーシャ。あなたたちは?」
ミーシャ「一緒に……行きたい。連れてって……欲しい……! ぐすっ……」
リク「ミーシャ……」
SE:魔獣(犬型)の心配そうな鳴き声
タケル「はぁ……仕方ないですね。元々、研究のせいで村の人には嫌われてますし……今更、ライカンスロープの子とヘルハウンドが加わった所でそんなに変わらないでしょう…………いいですか? 私の言う事をよく聞いて、良い子にするんですよ!」
ミーシャ「……ぁ。……っ!! はい!」
リク「タケル……! ありがとう!!」
SE:魔獣(犬型)の喜びの鳴き声
タケル「いいですか? これからはみんなで幸せになるんです。だから、良い子にしててくださいね!」
リク「えへへ。タケルゥ……! だーいすき!」
ミーシャ「私も……! その……パパ……大好き!!」
SE:魔獣(犬型)の喜びの鳴き声
タケル「はぁ……まったく。ほら、帰りますよ。我々の家に」