【♂1 ♀2】 怒りっぽい彼女と、勘違い男

   

【登場人物】
早瀬 18歳 男 緒方を好きな男の子。明るい性格だが、不器用で言葉足らずのため、誤解されることもしばしば。
緒方 18歳 女 早瀬の事を好きな女の子。現状は仲の良い異性の友達という関係。
須藤 18歳 女 緒方と早瀬のクラスメイト。緒方と仲がよく、早瀬の性格を分かった上で楽しんでいる。

早瀬「おーい! 緒方! おーい!!」

緒方「ん? なんか呼ばれてるっぽい。ごめん。先行っといて。うん。後でね~」

*間

緒方「……どしたの? 早瀬。そんなに急いで走ってきて」

早瀬「はぁ……はぁ……。んぐっ。はぁ……あのよ」

緒方「うん」

早瀬「お前ってさ」

緒方「うん」

早瀬「ウリやってるってマジ?」

緒方「はぁ!? ……っ!」

SE:頬を張る音

緒方「最っ……低!」

早瀬「おい待てよ! 緒方!」

緒方「なにすんのよ。放……して……よっ! 人呼ぶよ!」

早瀬「頼む! この通りだっ! 話を聞いてくれよ!!」

緒方「……え? なに? なんで土下座? どん引きなんだけど」

早瀬「もし、もしそれが本当だったとしたら……」

緒方「はぁっ!? だから、違うって……」

早瀬「俺を!! 男にしてくれっ!!」

緒方「……は? 馬鹿じゃん? 他の人に頼みなよ」

早瀬「お前にしか頼めないんだよっ!! 頼むっ!」

緒方「……っとに。ばっっっっかじゃないの!? 違うって言ってんじゃん! それに何!? ヤらせてくれって事? ふざけないでよ! あんたそんな目であたしの事見てたわけ!? ……最低」

早瀬「あ、いや。違って……俺は……ただ……!」

緒方「うるさい。ばーか! 死ねっ!!」

早瀬「おい、緒方! 緒方ぁ……!」

*間

●放課後

須藤「やっ! とおわったー! っくー!」

緒方「ちょっと。私まだ黒板写してるんだから邪魔しないでよ」

須藤「ん~。ごめんごめん」

SE:ノートを写す音

須藤「……なんかミク機嫌悪いね?」

緒方「っ!? そ、そう? 全然そんな事ないけど……」

須藤「はっはーん。早瀬と喧嘩した? さっき声かけられてたじゃん」

緒方「うえっ!? き、聞いてたのっ!?」

須藤「ん~ん。何を話してたのかまでは聞こえなかったけど~。早瀬土下座してたじゃん。許してあげなよ」

緒方「……はぁ。許せる内容なら、私も許すんだけどね……。っとに、早瀬のやつっ! 思い出しただけで腹立ってきた!!」

須藤「うーわ。本気で怒ってるじゃん。ミクがそこまで怒るのって久しぶり~」

緒方「……聞かないの?」

須藤「ん? 何が」

緒方「……何があったのか……とか」

須藤「ん? 聞いてほしいの?」

緒方「……やっぱりいい」

須藤「嘘嘘。何があったの~。教えてよ~」

緒方「いい」

須藤「拗ねんなよ~。ミク~」

緒方「ふんっ!」

須藤「こいつぅ。こちょこちょこちょ」

緒方「あっ! ちょっとやめっ! あはははは! やったなー!」

須藤「きゃっ! お、お主そこに手を触れるとは……! えいっ! お返し」

緒方「ちょ! やっ! もうっ! こちょこちょこちょ!」

須藤「負けるかぁ! こちょこちょこちょ!」

*間

早瀬「緒方っ!!」

緒方「早瀬っ!?」

須藤「早瀬じゃん。やっほー」

緒方「……なにしに来たのよ」

早瀬「話が……あるんだ!」

須藤「あたしの事は無視ですかそうですか」

緒方「別に、あたしには無い。話しかけないで」

早瀬「お前が何を怒ってんのかは分からないけど! 誤解なんだよ!」

緒方「誤解も六階も無い。だいたい何を怒ってんのか分からないって、ふざけてんの!?」

早瀬「いや、真剣だ。俺は……真剣に話があるんだ!!」

須藤「はぁ……帰ろ。お先~」

緒方「へぇ…… 真剣にあんな事言ったんだ? どん引き…… じゃあね!」

早瀬「だから、待てっ……て! 話を聞けよ!」

緒方「だから放してって……もうっ。なんなのよ!」

早瀬「……話を、聞いてほしい」

緒方「……はぁ。分かったから。もう。放してよ」

早瀬「ごめん……」

緒方「いいから。早く話してよ。あたしも暇じゃないんだから」

早瀬「うん…… あの……さ」

緒方「……」

早瀬「俺を……男に、してくださいっ!!」

緒方「……はぁ!? またそれっ!? だからそういうのは他を当たれって……」

早瀬「お前じゃなきゃ駄目なんだ! その……俺は、お前がいいんだ……!」

緒方「はぁ……だからって、そういうのは彼女とやりなさいよ。あんた馬鹿だけどそれなりにモテるんだからさ、お願いしたら彼女になってくれる子、いるんじゃない?」

早瀬「……お前は駄目なのか?」

緒方「は?」

早瀬「お前は……俺の女になってくれないのか?」

緒方「えっ!? ちょ。それどういう……」

早瀬「もう一度だけ言う。緒方! 俺を……お前の男にしてくれ!!」

緒方「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!? って、え、あ、そういう……?」

早瀬「小遣いがほしいなら、俺がバイトして稼ぐから。だから……他の男になんて触らせないでくれ! 頼むっ! 俺は、ずっとお前の事が好きだったんだ!!」

緒方「ええぇぇぇぇぇっ!?」

早瀬「……」

緒方「……」

早瀬「……泣くなよ」

緒方「泣いてないわよっ!」

早瀬「いてっ!」

緒方「あんたのアホさ加減に怒ってんの!」

早瀬「えぇ……」

緒方「そうならそうと最初っから言いなさいよ! 紛らわしい!」

早瀬「言ってたじゃん。男にしてほしいって」

緒方「だーかーらー! 言葉っ! がっ! 足りないっ! っていうか、紛らわしい言い方しないでよっ! ねっ!」

早瀬「いたいいたいいたい。緒方痛いって……分かった。分かったから……! そんな殴らないでくれよ」

緒方「いーや。ぜっっったい分かってない!」

早瀬「いや、分かってるって…………駄目……なんだろう? ごめんな……突然こんな事いって……」

緒方「ほらっ! 分かってない! いい!? あたしはね! 悲しかったのよ! あんたが……他の誰でも無い、あんたがあたしの事をそんな女だと思ってたんだって……誰にでも身体を開くような……そんなっ……女だって……ぐすっ……」

早瀬「……ハンカチいる?」

緒方「いるっ!! ……ぢいいいいん!」

早瀬「……そのハンカチあげるね」

緒方「……ありがとう。それで! だから……あーっ! もうっ! こういう事っ!!」

早瀬「えっ、えっ。どういう事!? ……チョークスリーパー?」

緒方「あんたの事! 好きって事っ!!」

早瀬「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!? マジっ!?」

緒方「マジっ!!!!!」

早瀬「怒ってるじゃん……」

緒方「怒ってないっ!!」

*以下徐々にフェードアウト

早瀬「やっぱ怒ってるじゃん……」

緒方「だから怒ってないっ!!!!」

早瀬「いややっぱり怒って……」

 © 2016 堂家 紳士

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